Bittersweet Maybe - Bubble Talk -

Status Message:周回遅れのビール日記(順不同)

最有力候補。と思いきや(シリーズ:翌4月からの仕事)

毎年は空くことのない契約社員的ポスト、たまたまわたしの来年度がかなり不安になるこのときに、1つ空くという。
もうこれはなんとかしてもぐりこむしかない! もぐりこみたい!
 
しかし、そう希望をかけている人は、わたしだけではない。おおかたのパート的ポストの人も同じように狙っているという。
 
実際に「私は**さんがお辞めになった後、そのポストに入りたいんです」と決定権を持つ中間偉い人にお願いしている人も、(話によると多数)いるらしい。
 
しかしわたしはまだ沈黙を守っている。
とにかく下手なことをしないこと。いずれにしても公募されるものなのだから、そこでさりげない風を装って「たまたま見つけまして」と応募すること。それまでは、これまでの評判を落とさないよう、控えめで、誰に対しても感じのいい態度をとっておくこと。
――実はこの話を聞かなくても、来年度についてはきっとあらゆる募集を探すだろうとは思っていたのだが、知ってしまうともうとにかく第一希望はやはりこの仕事しかない。
 
 
ここまでフリーランス的ポストではあったけれど、10年働いてきた。
主な職歴がサービス業とたった10ヶ月の経理事務パートしかなかったわたしが、10年間で失敗もしながら学んできたことは、「余計なことは言わない」「立場を越えたことをしない・言わない」「露骨に自分アピールをしない」「一番大切なことは、一に従順、二に愛嬌、最後の最後に能力があること(ただしその能力は、決して自分より立場が上の人を超えてはいけない、いや超えてもいいのだが「あなたにはかないません」と常に身を下に置くこと)」。
これが年功序列型・家族的・会社組織で身を処していく術(じゅつではなく、すべのほう)。
 
少しずつ学んでいき、わたしも大人になった。
わたしより上の立場の人というと、ほぼ全員だ。わたしと同じフリーランス的立場の人以外はすべて上になる。
 
それでもやってこられた。それほど気にならなかった。
階級や身分のピラミッドにしっかり組み込まれていたわけではなく、あくまでフリーランス的立場だったから。
フリーランス的立場の人は、お客さんだ。ピラミッドに入っていないので、庶民であっても「お客さん庶民」なのである。
 
そうだな、ちょっとアルプスの少女ハイジに似てるかな。あの世界で、ハイジはどう考えても内働きメイドのチネッテよりも下だろう。デルフリ村のヤギを飼ってるおじいさんの孫でしかないのだから。メイドだって、外の仕事をするメイドと違ってチネッテなんてお嬢さまのクララにも直接接する上位メイドだ。
でも「お嬢さまのお話相手役」としてやってきた、つまりクララの地位の庇護のもとにいる。お給金ももらってないから雇われ人ではなく、いい服を着てお嬢さまと同じ教育を受けられる、いわばお客さんである。
お客さん扱いなので、チネッテもセバスチャンもハイジのことを「お嬢さま」と呼ぶ。
ロッテンマイヤーさんは家政を取り仕切る立場で、それってかなり偉いので、ハイジなどお客さんといっても子供で、しかも家柄も低いので、かなり強い態度を取る。
でももしハイジがロッテンマイヤーさんの気に入るような身の処し方をすれば、それなりに優しく接してもらえたはずである。
クララのお父さんもクララのおばあさまも、ハイジはとるにたらない貧乏人の娘ではあるが、お客さんだから大切に扱ってくれる。紳士淑女なのだ。
 
フリーランス的立場は、いってみればそんな感じだから、ピラミッドの苦痛をそれほど味わわない。
超偉い人も、まるでクララのお父さんゼーゼマンさんのように、ハイジであるわたしたちに礼儀正しく接してくれる。
たまたま気に入ってくれれば、クララのおばあさまのように、ハイジであるわたしたちに優しくしてくれる。ときには飲み会にも暖かい気持ちで受け入れてくれたりする。
 
わたしは現実というものを学んだが、そのつらさからはある程度身をかわすことができて、とてもラッキーだった。
だからフリーランス的立場が安泰である限り(極端に数が減るとか時給が減るとかで生活できないなんてことがない限り)、フリーランスで満足だった。
 
実はハイジと同じで、チネッテたちよりもいい服がもらえたり、いい部屋がもらえたり、――つまりなかなかいい時給だったのだ。
 
しかしわたしはハイジではなかった。ハイジはクララに唯一無二の友達と思われていて、蹴落とされる心配はなかったが、わたしのフリーランス的立場は違った。
ときどき、2人の枠に3人4人5人と人が増えたり、1人の枠に2人3人と人が増えたりするので、ハイジより必死である。
 
2人枠は死守してきた。増えた人員は、残った1枠を交代で出るということしかなかった。
1人枠の業務のほうは、ときどき奪われた。少しだけ奪われるときもあったし、たくさん奪われるときもあったし、うまみの多い仕事だけ奪われるときもあった。
 
だからわたしはすべての人に当たりを良くしなければならなかったし、すべての人に当たりを良くすると今度は「あの人と仲良くしすぎるとよくないですよ」と敵対関係に巻き込まれたりするから、均等にうまくやりつつ、誰に力点を置くかは見極めなければならなかった。
職場だから、メイドだってチネッテだけじゃなく何人もいたし、ロッテンマイヤーさん級も一人ではないし、全体を考えたら大量の人がいるわけだ。
 
その中には、かつてセバスチャン級だったが、途中でリタイヤしてまた戻ってきたという人もいる。
戻ったときはもう正社員的立場ではなくなっていたが、かつてその人の後輩だった人たちが偉い人、超偉い人になっているので、自然と「虎の威を借るキツネ」みたいな特殊な立場になっているとか。(積極的に自分から借りたりはしないが(そういうのはルールに反するので嫌われるから)、貸してくれるものを断りはしない。でも暗黙の了解で誰もその人のことを「威を借りている」とは言わない。「人徳」「能力」と言っている。)
 
もちろん仕事は休まなかった。10年一度も。
遅刻もしなかった。
ペアの人が休んで一人でやることになった日があっても、笑顔で受けてきた。
そして自分は穴を空けなかった。
休みの日にお祭りのような行事が年1回あるが、ここ5年は毎年必ず行っている。ただ見学に行くだけだ。それでも行っている。
仕事も頑張ってこなそうとした。結果がどうだったかは――時によるけれど、軽く見たことはなかった。
 
どんな人に対しても人当りもよくしようと努力してきた。偉い人はもちろん、守衛さんや清掃員さんにいたるまで。
特別に飲み会や集まりに誘われれば必ず出席してきた。わたしのような者まで呼んでいただいて有難いという態度を、徹底して見せるよう努力した。
陰の威がある人にも、ない人にも、ひたすら当たりをよくした。心から信じてお世辞を言った。嘘はバレやすいから。
そう、男性でも女性でも、偉くても偉くなくても、すべての人がお店に来たお客さんであるかのように、そして自分はちいママになりたいホステスであるかのように、最善を尽くした。
 
でもそれほど難しくないのだ。
毎日行くわけじゃないし、誘われる会なんてたまにだから。
ほかのフリーランス的立場の人よりはめちゃくちゃ努力してきたとは思うけど。
 
この努力がどれだけ役に立っただろう?
 
でもそんなことは考えないのだ。
わたしは「やりたくてやっている」のだから。見返りを求めているのではないのだから。
本当にありがたいのだから。本当に楽しいのだから。本当に相手が好きなのだから。
 
そう、この姿勢が大切なのだ。
「わたしは決して何かを求めてやっているのではない」という姿勢が。
 
ときには給料さえ、求めていないという姿勢を見せる必要があるのだ。
「やりがいのあるお仕事ですから」「あ、この週は中止ですか。わかりました(ニコ)」
 
 
それで、そうして10年、とにかく出会う人すべて大切にしてきたつもり。
――まあ、最初のうちはルールをよく分かっていなかったから、失敗もしていたわけで、10年同じレベルで同じことをやってきたというのは大げさだけど。
 
そして年末になって、わたしが欲しい契約社員的立場の空き予定ポストは、どうやらわたしが最有力候補になっているようだと噂を聞く。
一般レベルだけどかなり陰で力を延ばしている人と、かなり偉いけど飛び抜けて偉くなるのはあと1つくらい上がらないとくらいの人から、そう聞いた。
そしてついに、超絶偉い人も非公式の場でそれらしいことを言ってくれた!
 
ここまで来ると、ちょっと見えてきた!
 
 
でもまだまだ油断はできない。
ここで油断して、何かしでかしたり、ポロッと余計なことをしゃべって人の恨みを買うようなことがあっては、いけない。
誰かの不興を買うようなことがあってはいけない。特に偉い人たちと、同じ獲物を狙っている人たちの不興は恐ろしい。
 
身を慎んでおかなければいけないし、それに喜んでもいけない。
 
だってまだ公式なことは何も言われていないから、「あー、あれね、なくなった」と終わってしまうかもしれない。
わたしがいざ履歴書を提出しようとしたら、その学歴では受け付けられないと言われることだってあり得る。
そうなってもいいように、別の道も考えておくくらいでちょうどいい。





ここまで書いたところで下書きを終え、自分では完成のつもりで予約投稿した。
そして仕事に行った。
といっても朝から夕方までの仕事ではない。あるちょっとした委員にしてもらって、今年はその世界をチラ見させてもらってる。委員会があって、出席しなくてはならなかったのだ。
委員会は30分くらいで終わってしまい、上級の委員と一杯やることになった。(わたしは下級の委員の役で、下級委員にしてもらったのもこの上級委員の飲み仲間だからなのだ。一杯やって帰るのは既定のお約束なのだ。)
 
30分の委員会のために出かけていき、そのあとの「一杯」が5時間にも及んでしまった。
きりのよいところで切り上げようと思っていたのに、この上級委員もわたしの次年度を心配してくれていて、あれこれ話してくれたので切り上げられなかった。
裏話なのか、ご自分の考えなのかわざとぼかしているところもあり、何度も「信用しないでね」「私の言ってることは、どうなるか分からないからね。信用しないでね」とおっしゃる。
 
で、それによると、わたしは空く予定のポストの最有力候補である。
――ある一部の人たちにとっては。
 
たとえば**さんと**さんはわたしを一押ししてくれてるということだった。
 
ほかの人たちにとっては、別の人が最有力候補かもしれないわけである。
 
なぁんだ~
 
上級委員は言う。「決定に一番影響するのは現場の人の意見だ。現場の人とはつまり**さんだ。**さんは現に今、現場でパート的立場の人たちと仕事をしているわけだから、その人たちが契約社員的立場になりたがっていたら、なかなか無視できないだろう」
 
そうなのか~ そういう考え方もあるのか~
 
上級委員は「現場の人っていうのは、**さん(正社員的立場の人)と、***さん(正社員的中くらい偉い人)だ」とも言った。
中くらい偉い***さんには、少し前に「実はそういうことがあるのだが、あなたになってもらえたらと思ってる」ということを言ってくれた。でも――「まだ決まってないから誰にも言わないでね」と言われたし、上級委員に言うかどうか迷ったが黙っておいた。
 
ものすごく飲んでしまって二日酔い。
それになんか財布のお金も減ってる―― 旅行なんか行っちゃったから、正月を前にものすごく心もとない手持ちになってるっていうのに。
 
ここまでして得た情報は、合っているかどうかも分からない。ヨタ話かもしれないし、裏話かもしれない。
 
その話によると、今わたしがやっている仕事も、来年はぜ~んぶなくなるのだという。だからわたしの居場所はないのだという。
でも違う方面からは、来年はとりあえず人は減らすけれどまだあって、少しずつなくしていくと聞いた。
 
やれやれ、どう考えたらいいか分からない。
 
 
 
 
というわけで、
「油断できない」
「身と口を慎んでおかなければならない」
「どうなってもいいように覚悟しておかなければならない」
というのは、念のため程度の話ではなく、本気で取り組むべき課題だった。




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