“いつメン飲んべえ”と名付けられた、コロナ禍を共に過ごした仲間は、シキさんが去り、次にタカさんが去った。
シキさんが去るときは、まだコロナ禍だった。それでも、できるだけの人がタカさん邸に集合して見送った。“いつメン飲んべえ”は、Barid Beerのタップルームでお別れ会をした。去りやらず、二次会は近くのたこ焼き居酒屋になだれ込んだ。
タカさんが去るときも、まだ完全に過ぎ去ってはおらず、いわゆる危険度が「五類」に下がる前だった。しかし、コロナ禍は終わりに向かい始めていた。致死率や症状の重さがだいぶ下がってきた。かかった人も多くなってきて、感染に異常な恐怖と攻撃性を見せる人も少なくなっていた。タカさんが去るときは、居酒屋の個室を取り、みんなで見送る会をした。4人になっていた“いつメン飲んべえ”は、松本へのビアドライブをした。“飲んべえ”部分のタカさんとケイさんとわたしは、豊島区ビア巡りをした。ホッシーさんを含む“いつメン飲んべえ”+コヤマさんでワインを気軽に飲めるお店にも行った。
そして、飲める最後のひとり、ケイさんがいなくなる。タカさんが去ってからのちは貴重な人ではあったが、お互い少し気難しいところがあるから、一緒に飲んだ回数はシキさん、タカさんと比べると少ない。ケイさんは「みんなで」には絶対来るが、ふたりでとなると注文が多かった。
ケイさんは西日本でタカさん邸で開催されている麻雀会を楽しみにしているようだし、大好きなゴッチンさんとも飲めるだろうと期待しているようだ。楽しみがあるのはいいね。
でも、これでついに“いつメン飲んべえ”も解散か――。
タカさんの時を思えば、ケイさんとのお別れ会もたくさんすべきだろう。
だが、今のわたしはいっぱいいっぱい。試験日までまったく余裕がない。たとえ軽くでも、外食をしたりお酒を飲んだりした後は、時間があっても勉強はできないと自分を分かっている。
ごめん、3月下旬まで何もしてあげられない。それに、3月下旬には義父の三回忌があり、それには絶対出席することになっている(お寺に一か三のどちらかをすればいいと言われ、事情があって一回忌ではなく三回忌にすることになっていた)。最後に使えそうな土日が、わたしは空いていない。
で、本当はこの「新しくできたお好み焼き屋さんがおいしいってコヤマさんが言っていたから、行きましょう」と前から言っていたお好み焼き屋も、いざ行くとなると行きたくなかった。
だが、ケイさんがいなくなると分かったし、ホッシーさんが珍しく「お好み焼き、2月の21日くらいにと言っていたのをどうしますか」と言ってきた。この「どうしますか」は行くか行かないかではなく、どう集まるかなどの具体的なことだ。
仕方ない、これは行くしかない。
行くなら楽しもう。
お好み焼きデーの2日ほど前、YEBISU BARアプリのお知らせで、ジョッキを1杯注文するとお惣菜3つがついてくるキャンペーンをしていることが分かったので、それも寄ってみませんか? 期限がちょうど21日までだった。
ジョッキを注文して乾杯!!
ホッシーさんも“いつメン飲んべえ”時代にYEBISU BARアプリをインストールしていたので、ジョッキを注文。タブレットのビールの説明を真剣に眺めて、「私はプレミアムエールにしよう」と注文していた。
わたしは定番ビールの中で一番好みの琥珀アンバーを選び、ビヤカクテルのアップルブリューという期間限定商品も注文した。ケイさんも悩んだ挙句、琥珀アンバー。
プレミアムエールとケイさんの琥珀アンバーを飲み比べたホッシーさんの感想は、「あー……うん、これは。私はエールの方がいいな。モルトよりホップなのかな、私は」
おお! さすが理論派ぞろいの“いつメン”の一員!(わたしを除く)
モルトよりホップですか! 忘れちゃうからこの思い出をメモしておこう。
しかし、ホッシーさんはすぐに眠くなってしまったので、3分の2はケイさんとわたしで分けた。まだ先がありますからね。
お惣菜3品はどれもおいしかった。クリームチーズの味噌漬けのようなものも、煮あさりみたいなものもよかったが、わたしの一番はまんなかのナッツだった。
おいしいというより(おいしさはどれも同じようによかったので)、まぶしてある粉のスパイシーさと、不思議な味わいがよかった。ハーブというより、スパイスみたいな。
ホッシーさんは、ビヤカクテルのアップルブリューはよかったようで、「甘いな。これなら私も飲める」と言っていた。「ビールは苦みが……」とも言っていた。苦みが得意でないため、モルトよりホップと言っていたらしいが、わたしにとってのホップって苦みでもあるな。
アップルブリューはできるだけホッシーさんに飲んでもらいたくはあったが、次もあるのでずっと待ってはいられないし、既に眠気が襲ってきているようだったので、わたしとケイさんも参加して片付けてしまった。
ごちそうさまでした。ホッシーさんもビールでだいぶ眠くなりかけているし、ここに長居はできない。お好み焼きに向かおう。
向かう途中で、ホッシーさんがよくやるというガチャのショップに立ち寄った。
なんとなくはイメージできるけど、「ガチャ」って何が楽しいの?? という超年配層なわたし。
ホッシーさんは、少し前にガチャで3個連続同じものが出たという話をする。「7つも種類があって、3回引いて全部同じ色ですよ!」
――うーん、なるほど。何に使うんだろう?
「職場の机の上に置いたり」とケイさん。そういえば、こういうのを置いている人、いるよね。でも楽しさが分からない気持ち。
分からなくていいか。分かったら、「この色が欲しい」と何度もお金をかけてしまいそう。ピクミンのゲームも課金を抑えているわたし――楽しむためにこのくらいはかけてもいい、という限度を守れそうにないので、なるべくゼロを目指している。
ホッシーさんのおつきあいで1回だけやってみよう。
箱に貼られた紙を見て、「これが欲しいな」と思う。上を見上げているカエル。
ガチャをしてみる。出てきたのは、真っ白いカエル。
わたしが何も分からずにいるので、ケイさんが盛り上げる。「レアですよ。1回でこの見えてないやつが出たんですよ」
なるほど、そういう仕組みなのか。でも、やっぱりこの上を見上げているのが欲しいな。――なるほど、そうやってお金がかかってしまうのか。
楽しそうだけど危険な遊びだなぁ。
ホッシーさんは、3回連続で同じ色が出たというガチャをもう一度引き、違う色が出たようだ。「これ、持ってるかな」と携帯で写真を調べていたが、「持ってた」と言う。
色は7色あり、今日も含めてホッシーさんは5回引いている。そのうち3つが3回連続同じ色の青。今日の1つは家にある青でない色(白)と同じ。
「5回引いて、3つ同じ色で、残り2つも同じ色って!」と熱く語り、それを聞いて「なるほど、そういう楽しみ方もあるんだな」とわたしは思った。
ホッシーさんはわざわざガチャに来ることはないようだ。用があって出かけたときに通りすがったらやる、ということらしい。
わたしのおみくじみたいなものかな。これがいいなと思ったものが出たら気分が上がったり、特に目的なくやって出てきたものが「いいな」と思えるものだったら嬉しかったり。
お好み焼き屋さんに移動した。ふわふわのお好み焼きを売りにしている「清十郎お好み焼き」。
しかし、この店を教えてくれたコヤマさんは、「焼きそばがうまかったですよ」と力説していたので、わたしも最初の訪問時は焼きそばにしたのだが、確かにおいしかった。
とういわけで、まずは焼きそば注文だよね。それからやっぱりお好み焼きだけど、初回だからフラッグシップ商品らしい清十郎スペシャルにはするよね。
もうひとつは季節限定の牡蠣のお好み焼き。ふたりは以前「かきおこ」を食べたことがある。牡蠣のお好み焼きという贅沢な食べ物だ。
ケイさんとホッシーさんは、ふたりでメニューを見て相談、注文するものを決めた。「焼きそばに卵はのせる?」「のせましょう!」「牡蠣のお好み焼きだって。ホッシーさん、かきおこ食べたことある?」「食べたよ」
飲み物はケイさんとわたしで相談。「赤星がある、赤星にしましょうか」とケイさんが言うので、瓶ビールになった。グラスは2つ。
ホッシーさんとケイさんは、次のケイさんの異動地に以前同じ時期にいたことがある。ふたりで社員寮の構造の話や、ケイさんの今後の生活や、ふたりともそこにいた当時の思い出を語った。
わたしは、前にも聞いたことがある話について「**だって聞いたことありますよ」とか「ホッシーさんは**だったそうですね」みたいな会話促進になりそうな一言二言をはさむだけ。
主役はケイさんと、ケイさんの大親友のホッシーさんだからね。ふたりはパートナーと言っていいくらいの仲良しだと、みんなが認めている。ケイさんがいなくなるのは、ホッシーさん、寂しいね。
話が長くなったので、わたしはビールを追加。
帰りがたかったのか、もう来ないかもしれないからあれこれ試しておきたかったのか、ケイさんは塩焼きそばに興味を持ち、それも注文することになった。
西日本の赴任地は、車社会。飲みに行くのはなかなか大変。かつてはホッシーさんがいたから、運転をしてもらうことができたけど。
そんな話から、ホッシーさんに運転してもらったビアドライブの話になる。これならわたしも一緒だったから参加できる。
松本のあのお城はすごかったですね。登れないんじゃないかと思いましたよ。実際登れない人がいましたよね、高齢の方とか。そういえば、タカさんがこんなことを言っていましたよ。そんなことを?
たくさん話して、その話に笑って、楽しく賑やかに食事が終わった。
建物の上から空を見上げて少し散歩した。
ケイさんを送る第一弾。
次はわたしの試験が終わるまで待ってね。ごめんね。
お疲れさまでした。おやすみなさい。