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Status Message:周回遅れのビール日記(順不同)

誠心誠意は通じるか?(ある意味シリーズ:翌4月からの仕事)

ここ1年ほどブログを見ているある人、面白いので毎日見ている。SKさんとする。

SKさんはハードなビル清掃や倉庫内軽作業などをやってきて、半年くらい前に新たなハードワークに就いた。

 

わたしは「軽作業」というものがそこまできついものだとは知らなかった。わたしも軽作業をやったことがあるが、本当に軽作業だった。

そんなハードな軽作業があるとは。

また、清掃もこれまで中高年女性も働いているようなビル清掃しか知らなかった。(掃除は苦手なのでやったことはないが。)

そんなハードな清掃があるとは。

 

SKさんの新たな仕事は、工場内軽作業。

いろいろな作業があるが、どれも体を使う仕事で、きつい部署は相当きつそう。

 

わたし自身、来年度がどうなるかと思っていて、人の転職には興味があった。

 

普段使わないような筋肉を使ったり、腰にきたり、休日はただ疲れて寝ることしかできなくなったり、過酷な日々を過ごしている様子を読んで、わたしは年だからもう体力仕事はできないと自分に当てはめて溜息。

その工場には日勤と夜勤があって、Kさんは派遣で夜勤に就いていた。

 

夜、そんなきつい仕事をする人たちは、誰もが愛想がよいわけではない。

時給が20003000円ともらえるわけでもないし、監督役以外は軽作業派遣かアルバイト。外国人も多いし、問題行動をとる人も多い。無断欠勤する人もいるし、無断ではないけれどすぐに欠勤する人もいる。

 

そんな中、SKさんは人に会ったら挨拶をする。「どうせ働くなら気分よく働いたほうがいい」と言って。

そんな中、SKさんは休まない。無断欠勤はもちろんのこと、与えられた休日以外には休まなかった。

穴が空くと、誰かが穴埋めに回される。どの部署の誰をどこに回すかは、監督役が決める。SKさんはどこに回されても文句を言わない。たとえ心の中では言ったとしても。

きつい部署は休む人も多く、他の部署の人はそこに穴埋めに回されるのを嫌がる。でもSKさんは、「えー!」という気持ちを少なくとも態度には出さず、指示に従う。

SKさんはお金が必要なので、残業を頼まれれば喜んでする。

誰とでも円滑に仲良くしようとする。

 

「気持ちよく働いても、気分悪く働いても、仕事は仕事なのだから、できるだけ気持ちよく働けばいいと思う」と書く。

「挨拶は社会人の基本、人間の基本ですよ」と言う。

「手を抜くことは考えられない。仕事なのだから」ときつい仕事もまじめにやる。きつくない仕事も丁寧にやる。

 

やがて派遣の契約期間が切れることになり、どうしたらいいかと監督役に聞いたら、直接雇いにしてくれることになった。

そのほうが実入りが増える。派遣会社が若干抜いている手数料部分がなくなるからだ。(でも今どき、半分だの3分の1だのピンハネしたら給料なくなってしまうので、派遣会社もホント若干しか抜いていない。だから増えるといっても若干ではあるが、やっぱり嬉しいことだ。)

 

SKさんは喜んでいた。「ちゃんとやっていれば、誰かが見てくれているものなんですね」

 

それから監督補助という役名がついた。

SKさんはとんとん拍子。「誠心誠意働いていれば、それが通じるのです」

 

 

 

 

わたしはわが身を振り返ると、なんだか浅ましく感じられた。

 

1つの空きポストを狙って鵜の目鷹の目で狙っている人たちの中に身を投じ、自分も同じように狙っている。

一生懸命に、まじめに、誠心誠意、仕事をこなしてもいるけれど、それ以外にも工作をしている。有力者には特に素直な態度で、愛想を振りまいたり、自分がやったことはさりげなく「自分がやりました」というアピールをしたり、認められるためにあれこれしている。

 

誠心誠意働けば、いつか通じる――そう考えて、身を粉にしてただ良い仕事をすることだけ、努力しているわけではない。

 

でも、わたしがやっている以上のおべっかやアピールやごますりや取り入りを、他の人たちもしている。(わたしは関係者に接する機会が少ないし、世渡りが下手なところがあるらしいから。)

だから仕方ない、わたしだけやらないわけにはいかない、他の人もやっているのだから仕方ない。それがわたしの言い訳だった。

 

 

 

 

最近、SKさんは、工場を辞めようかとまで悩んでいた。

ものすごくタチの悪い作業員がいるからだ。あまりひどくて、「P―さん」と呼んでいるくらいだ。(「P―」の部分にはお好きな罵倒をどうぞ)

 

いやもう、このP―さんときたら、SKさんの仕事の邪魔をする。勝手に自分のやりたいようにやるので、困るのだそうだ。

たとえば、「この部品をつけたものを、あの箱にしまう」という作業のとき、部品がつけてあろうがなかろうがしまってしまうので、後からSKさんは大目玉をくらったりするのだそうだ。「部品のついてないものがたくさんあった!」

この場合、部品をつけるのは監督補助のSKさんの役目で、SKさんを手伝って箱にしまうためにP―さんがいる。だから怒られるのはSKさんなのだ。

SKさんが何度注意しても、P―さんは勝手にやりたいようにやる。一度は大声で叱りつけたが、お互いにムッとして険悪になりはするが、P―さんのやり方が変わるわけではない。

 

部品入りの箱を運んで積み上げるにも、SKさんにぶつかろうが、他の誰かにぶつかろうがおかまいなし。自分の進行方向に存在する人間はすべてぶちかまして進む意気込みだ。

そのために、重要な作業をしている人の邪魔までしてしまい、ひどい言い争いになったこともあるらしい。

 

誰もがP―さんはどうしようもない困り者だと思っている。

よくいう「使えない」人ならまだしも、「人に迷惑をかける」「人の邪魔をする」人なのだからタチが悪い。

 

SKさんは監督補助になってしまって、勤務時間が長くなった。最後までいることになるし、夜からだったのが15時くらいに出勤するようになった。

それは時給制の給料が増えるからいいのだけれど、さすがに疲れる。

どこかの部署で穴が空き、穴を埋める人が誰も見つからないと、SKさんはそこを手伝わなければならない。自分の仕事もあるので、帰る時間はさらに遅くなる。

なにしろとにかく、無断欠勤する人が多い。無断欠勤が重なるとクビになるが、たぶん働くほうも「もういいや」と思っている場合があるのだろう。穴はあちこちで空きまくる。

 

結局、SKさんはP―さんに耐えかね、監督役の上司に相談。

自分が退職することも辞さない覚悟で、話し合いに臨んだ。

 

周囲も認めるP―さんの横暴な仕事ぶり。

役に立つSKさんが辞めるとまで言っている。それは工場側も監督役も困るだろう。

 

――でもP―さんは異動することも、クビになることも、注意されることもなかった。

そしてSKさんの辞職はなしくずしになんとなく立ち消えた。

 

ここまで読んでなんとなくわかった。

 

P―さんはどうしようもない困り者だが、ひとつ大きな長所があったのだ。無断欠勤をしない。欠勤もしない。

正直、いないほうがいいのじゃないかと思うが、それは一緒に働く人の論理であって、経営側は「頭数が足りない」というほうが困るのだろう。

 

SKさんを辞めさせたくはないが、P―さんを切ったり、辞めるほど怒らせたりしては、また人材確保に余計な経費をかけなければならない。

 

監督補助の前任者は辞めたためにSKさんが抜擢されたそうだが、前任者はP―さんと働くのが嫌で辞めたのかも、とSKさんが言うくらい、ひどい状況らしい。

 

 

 

 

「誠心誠意」について、わたしは思った。

 

まじめに働く人が少ない職場では、誠心誠意働くだけで素晴らしい。

きつくてやってられない仕事では、丁寧に手を抜かず頑張ってこなすだけで、貴重な人材だ。

監督役にしろ誰にしろ、「あの人はいいね」「得難い人材だね」と目に留める。

 

でもわたしが狙っている職場など、よい仕事だったりよい待遇だったり(少なくとも正社員以外ではよい待遇だったり)、人気があるわけだ。

そこで働く人は、そもそも誰もが「一生懸命働いてまーす」という態度を見せている。

 

誠心誠意だけでは伝わらない。

やっぱり打てる手はすべて打たなければ、その中で抜きんでることなどできない。

どんなささやかな「手」であっても、たゆまず打ち続けなければ。

 

だから皆、自分なりにできることを全部しようとするのだ。自分なりに知っている上のほうの人に働きかけ、できることなら他の人をさりげなく蹴落とし、自分が誰よりも役に立つということをたゆまず訴え続ける。

 

誠心誠意だけで通じるような過酷な仕事は、もう今さらわたしはしたくない。

頑張ろう。自分にできるだけ。

入ってしまえば後が針のむしろでもかまわない。それだけの価値がある職場なんだ。

 

わたし程度の学歴やキャリアの人間にとって、望みうる最高の職場なんだ・・・・・・




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