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Status Message:周回遅れのビール日記(順不同)

下っ端の気持ち(スカパーを見ていて)

いわゆる一般に「TV」と呼ばれるものは見ないが、スカパーは見る。
番組表はだいたい24日頃に届くので、翌月分をチェック、予約する。
 
国内ドラマの紹介ページはざっとしか見ないのだけれど、豊川悦司という名前を見つけて、そしてその横の写真がイメージとあまりに違ったので驚いた。
わたしのイメージする「豊川悦司」は、あまりわたし好みの顔ではなかったけれど、なんだかずいぶんいろいろと出演していた人で、小難しい表情に細い目にちょっと長めの髪、女っぽくもあるような――
それがスーツを着てネクタイを締め、眼鏡をかけ、七三みたいにしたおじさんだった。
そういう役だったんだろうけど。
 
まあ、それはどうでもいいのだが、しかしそれが記事文を読むきっかけだったので、どうでもいいというわけでもない。
 
このドラマで、以前映画で仕事をした監督と久しぶりにタッグを組むということで、そのエピソードが語られていた。
 
「まだシナリオもない段階で(今回の)お話をいただいたんですが、長年温めていたこの企画に対する、監督の熱意を感じました。撮影中も、親子丼を作るシーンで、最初フードコーディネーターの方が作ったんですけど「それじゃダメだ!」って怒り出して()。冬至、浅草で評判になっていた親子丼は、玉ねぎを使わず、長ネギと鶏肉だけで作るんだって。その辺もちゃんとリサーチ済みなんです。撮影を止めて「ネギ、買って来い!」って。細部までこだわって作っていましたね」
 
ふうん。
 
いい話なんだと思うよ。監督のこだわり具合を物語るエピソードなんだと思うよ。
 
でも、わたしはここまでの人生、下っ端ばかりやってきた。誰でも誰かの下であって、トップにいて上がいない人なんてそうそういないけど、わたしは社会という全体から見ても下っ端なのだ。この先も下っ端しかない。「誰かの」下っ端ではなく、「ほとんどすべての人の」下っ端だ。
だからいつでも自分を下側の人間になぞらえるようになってしまった。
若い頃は、たとえそのとき自分が下っ端でも、上のほうの目線になることが多いのにね。
 
で、わたしが思ったのは、「じゃ、言っとけよ」ということ。
そういうこだわりで映画を作りたかったんでしょ?
フードコーディネーターさんに「この時代の親子丼はこういうものなんですよ。だからこういうのをお願いします」と、あらかじめ言っておけば、無駄なお金も食材も時間もかからないでしょ?
「それじゃダメだ!」っていきなり怒り出されたフードコーディネーターの気持ちや、いかに? 自分だったら嫌だな、凹むな。
 
「そのくらい調べておくのがプロ」だってこと?
でも監督がそういうつもりなかったら? 「あのときのコーディネーターさー、親子丼に玉ねぎ入れないで、長ネギで作ってたよー」「えー、おかしいっすねー」「あれでフードコーディネーターが務まるんだからなー」「いいっすねー、楽な商売で」って言われることになったかもしれない。
それともプロは、「あの、監督、ワタクシの調べましたところ、この時代の親子丼は玉ねぎは使わず長ネギのようですが、そちらの親子丼をお作りいたしますか?」と聞くのか? それはそれで、「社会人」のプロではないような気がする。なんか、人を馬鹿にしてるみたいじゃない?
かといって、いちいち「このときの親子丼に、何か特別なご注文はありますか?」と聞くのもどうかと思う。だって、それって、親子丼だけの話じゃない。「このときのご飯とみそ汁は、どのように? 具などに特別な注意はありますか?」「このときのお茶は何か――?」「このときのお茶菓子は――?」「このときの鍋は――?」って全部聞くわけ?
プロなんだから、自分で考えて仕事しろよ、って言われそう。
 
だからやっぱり、そういう特別な思い入れがあるんだったら、「こういうものを」とあらかじめ言っておくのがいいと思うんだよ、監督さん。
 
だって、撮影を止めてそれからネギを買いに行かせるところから始めるなんて、撮影に関わるすべての人の手を止めさせ、時間を無駄にしているわけだよね。
段取り悪すぎ。これ、会社だったら、「そういうことは先に言っておけよ」「いいよ、もう、このまま進めるよ、時間の無駄だよ」ということになると思う。
そして「あのな、そういうことは先に言っておけよ、お前が言っておけば済むことだろ?」と注意か指摘かされることになると思う。
 
でもここがまあ、上の人っていうのは違うわけだよ。
映画監督は数少ないトップだからね。上がいないから、そんなこと言われない。
 
どんな会社だって、どんな組織だって、一番上の人っていうのは何も言われない。どんなバカなことをしでかしたって、たいていは何も言われないものなのだ。だって上からしか言われなくて、上はいないなら、誰も言わないってものだ。
 
 
 
やれやれ、と思いながら、日本語で放送されている番組を探した。
来月の予定表を作ろうと思ったから。――ほら、そもそも番組表を見ていたわけだからね。
 
そういうとき、暇つぶしに何かを見るけど、字幕は読めなくなってしまうので、日本語を探す。
TBSチャンネルで2013年の「渡る世間は鬼ばかり」スペシャルしか見つからなかった。
 
しばらく見ていたら、葉子の夫が建築の賞をとったんだってさ。
――葉子の夫って、こんなだったっけ? それに葉子、双子ができてたけど、まだ産める年齢だったんだ?
 
子育てに疲れてふらっと家出したらしい葉子。夫の「あきら」が慌てて親類に電話をして探す。
そうしたら、文子は夫と旅行代理店を経営していて、「忙しいから手伝いに行けない」と柔らかく返事をしていた。
 
この人たち、いつのまに旅行代理店などを経営していたの!?
最後に見たときは、自然食品の店をやっていたが――
 
このドラマでは、岡倉家出身の人たちは全員、社会の超エリート層なのだ。
たとえば長子が結婚したのが医者だったとか、葉子はかっこいい建築家だとか、そんなレベルの話ではない。
 
あ、失礼、ラーメン屋設定の五月は除く。
でもこちらのお宅も、ずいぶん雇われ人がいるし、超マンモス店なのかもしれないが。たしかどこかの子供が居候していた時期は、ネットでお弁当ビジネスなどもやっていたし。
 
それはともかく、たとえば長女の弥生だ。
長年専業主婦一筋にやってきて、「もう嫌だ!」と仕事を探す。
就いた仕事が超高級フレンチレストランの支配人だ。
このエピソードは当時の世間知らずだったわたしにも衝撃的だった。
え、いきなり、支配人!?
フランチャイズとかでもなく、雇われた支配人!? なぜそんな大抜擢?
 
 
下っ端の気持ちがどうとか考えていたところに、「わたおに」を見て、どうしてこの人たちはこんなにいつも事業主になれるんだろうと不思議に思ってしまった。
結構すごい超豪華旅行とかを企画したりしてたのだ。
 
 
それにしても、角野卓造がある時点からさほど変化していないのに、この五月=泉ピン子さんの貫禄っぷりといったら。鬼姑はもう要らないだろう。この人にたてつける人はいなかろうという貫禄っぷりだった。




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