疑心暗鬼(シリーズ:翌4月からの仕事)
いろいろと疑心暗鬼。
特に、たまたま今のところ直接の担当部長補佐となっている玉虫色の第二部長補佐に対して。
年末、わたしも誘われた飲み会に、第二部長補佐は来なかった。仕事が残っているからと断ったそうだ。
その席で、非公式にわたしは偉い人から腹をさぐられ、こちらも色よい態度でお答えし、「翌年度は別の働き方も検討してみてください」とさりげなく言われた。
そして、偉い人は、そのとき飲み会に来ていた現場チーフの正社員的スタッフに(わたしよりもちろん若い)、次年度空くはずのポストについて「こういう人に来てもらえたらいいと思っているんだよ」とさりげなく伝えた。たぶん現場チーフの人、寝耳に水だった。
この飲み会は、少人数で超党派の飲み会で、外部に漏れないメンバーだった。
きっとこういう話を出すつもりでいたはずで、第二部長補佐は分かっていたから来なかったんじゃないか。
「言われてしまったら、あいつを入れないわけにはいかないんじゃないか」と。
もちろんこんなことで安泰になるはずはない。面接は何人もの面接官がいるわけで、誰かを特別に推すなんてことできないだろうし、それにわたし以外にもめぼしい人には言ってるかもしれない。「あなたが来てくれるといいね」なんて。
2月はしばらく仕事がなかった。
終わり頃になって行ったら、相変わらず第二部長補佐は、わたしと組んでいるもう一人の人を優先する。
これ、最初はたまたまかと思ったんだけど、絶対意図してやってると思う。
「二人を呼ぶときは必ずもう一人の人を先に呼ぶ」とか、まあそんなほんの些細なことなのだが、でもこの細かい第二部長補佐が「たまたま」なんてことないように思える。
通常は右に立っているほうからなのに、もう一人の人が左にいてももう一人の人を先に呼んだりする。一度は「左側に立っている方から」と言い訳のように言った。次のときはわたしが左に立っていたが、そうしたらそのときはいつものとおり右から呼んだ。
たまにしぶしぶわたしを先にすることもあるが、やっぱりもう一人の人のほうを先にする率が高い。
でもそんなこと、意識してわざわざするかな?
偉い人なのに?
下っ端もいいとこの人間に対して、そんなことわざわざする意味あるかな?
――そう思うけど、どうしてもそう見える。
担当事務の人や、その他のいろいろな人がわたしを重用するのが、平等好きの第二部長補佐には気に入らないのではないかと感じる。
せめて自分はもう一人をひいきすることで、バランスをとろうというのではないかと。
わたしを重用しているっぽい人たちに直接反対すると、あれこれ言われたら厄介だから、こういうところでうさを晴らしているのかと。わたしへの反感を表現しているのかと。誰にも知られないところで。
――わたしって、馬鹿じゃないか。そんなつまらないことを、こんな上の人がやると本気で思うなんて。
でも・・・・・・結局、「来年度はお二人ともすべての仕事を半分ずつで」と言われた。
なぜこいつだけがたくさん仕事をしているのだ?というのが、第二部長補佐の思いなのかとやっぱり思う。
そしてそれを担当事務の人に言っても、「だってあの人のほうが頼りになるんですよ」と言われるのが、その担当事務の人の勝手な好みに見えるのだろうと思う。だってそういうふうに見えるんだもの、第二部長補佐――「担当事務の人とセットだと思ってました」と言われたことあるし。
偉い人がわたしを可愛がってる風に見えるのも、「酒の相手をするからじゃないか」と疑ってるのじゃないかと思う。ひいきだと。
わたしは仕事もしてるつもり。飲み会に誘われたら行くのは、プラスアルファであり、仕事で無能なのをカバーはできないと思う。
でも第二部長補佐は、なんとなくそんなわたしが気に入らないのじゃないかと思える。だってそう見えるんだもの。
面接を受けても第二部長補佐によって不採用にされるのじゃないだろうか?たとえわたしが受けた中で実際に悪くない人材だったとしても(そうだというわけじゃないけど、そうだったとしても)、第二部長補佐によって阻まれるのじゃないだろうか?
そこまでして受けなくたっていいのじゃないか、っていう気持ちにもなってくる。
でも気にしていたららちがあかない。
とにかく、募集があったら応募して、できるだけ力を尽くして面接を受ける。それでだめなら仕方ない。
年が明けてから、上のほうの人たちは誰も何も言わず、口を閉じている。
まるで「来てくれたらいい」と言ったことなどなかったように。少なくとも2人は言ってくれたのに。
そこにもってきて第二部長補佐の態度。
不安にはなるけれど、こちらもとにかくじっとして、余計なことを言ったりしないようにしよう。まるで来年も同じ仕事を続けていくかのように、身を潜めていよう。
それにしてももうすぐ今年度も終わってしまう――というとき。
これまで通り、何食わぬ顔で仕事をしておこうと決めて静かに過ごしている中で、担当の業務で変更したい点があった。
こちらから「第二部長補佐にお話ししたいのですが」と言い出すほどのことでもない、些細なことなので、ある日通りかかったときに呼び止めてお話した。
「これこれについて、今の資料が古くなってきました。新しく作成してみたのですが、よろしければ来月からこちらに差し替えようと思います。新しく作成した資料については、第二部長補佐にお渡しして指示をいただけばよろしいですか?」
「そうですね。私にください」
わたしは作成した新資料を渡し、「お願いします」と言った。
それで話は終わり、と思ったが、第二部長補佐のほうから言ってきた。
「×月×日から1週間、ハローワークで募集をすることになっています」
――これは、わたしに応募していいよってこと?
わたしはお礼を言って、よろしくお願いします、と言っておいた。
でも、実はこのことを、わたしを応援してくれているパート的スタッフさんが、こっそり教えてくれていた。「たぶん×月×日から2日間、ハローワークに出ますから、必ず応募してください」
2日間と1週間。
これってもしかして、最後の落とし穴?
第二部長補佐のほうからその話をしてくれた!と喜ぶ状況で、さりげなく「×日から1週間」と伝えられたら、その1週間の間にハローワークに行こうと思うだろう。
3日目に行ってみたら、「その募集はないですよ。締め切られたようです」とあえない最期を遂げるという??
さらにその後、パート的スタッフさんから情報が。「6~7人くらい応募があったところで締め切るっていう噂ですよ。だから早く行ったほうがいいですよ」
まさに2日目でも行ってみたら、「あー、もう掲載終了となりました」とあえない最期を遂げるという?
積極的にわたしを「NO」と言うことはしない。玉虫色の方だから。
でも表立たないところで、さりげなくシャットアウトしている?
「私も彼女いいなと思っていたんですけどね、本人が応募してこなかったものだから」
と自分の手を汚すことなく、突き落すことができる?
もうどこまでも疑心暗鬼。
でも最初のうちは「それならもういいよ」という気持ちもチラリと湧いたりしたが、ここまでくるとこちらも後には退けない。
「×月×日は実は予定が入っていて」(本当に入っていたが、なんとか動かすことに)
「早く終わったら×日の夕方必ず行きます。行けなくても次の日の朝一番には必ず行きます」と応援してくれる方2人ほどに言っておいてある。
もしこれを第二部長補佐が洩れ聞いて「6~7人で」と1日でシャットアウトを決めたのなら――と被害妄想的疑いが湧いたので、予定は動かして×日の朝一番に行くことにしたが、それは誰にも言わないことにした。応援してくれる方にさえも。
できるだけ一番目に応募してやる!
絶対一番目に、と言いたいけど、検索に手間取ったら一番でなくなるかもしれないから。
窓口の人は当たり外れがあって、はずれの人のほうに当たったら自分でやるより遅い&見つからないってことが分かったし。
あー、うまくいくといいな!