「今の人は苦労を知らない」というようなことを言われて育った。
関東大震災や戦争、戦後の混乱、大洪水や大噴火など、特筆すべき災禍のない時が続いたからだと思う。
むしろ、プラスのことばかり。日本は経済大国となり、その国に平和に住むことができている。先人たちの努力の成果を受け取るだけの世代のように言われていると感じていた。
戦争や大災害を目の当たりにしていないことは、引け目を感じるべきことなのだろうと思っていた。

東日本大震災は衝撃だった。
災禍は起こるんだ...

地震と津波で広大な地域が壊滅的被害をこうむったことと、メルトダウンなんていうSFか遠いよその国のこととしか思えないことが現実に起こったこと。

それから大きな地震や豪雨災害、噴火なども起こった。
「平和な時代」になってしまって、もうそんなことは起こらない。一生知らないんだろうごめんなさいと、引け目を感じる気持ちが植え付けられていたが、そうでもなかった。地球はそんなに安定していなかった。

今は新型コロナウイルスのパンデミック...
パンデミックなんて、SFだ。コニー・ウィリスの「ドゥームズデイ・ブック」を思い出す。
それから、ドラマなどで見るものだ。「CDCからウイルスが盗まれた。それが拡散されたらパンデミックになる！」みたいな。

SARSやエボラ熱のときも怖かったけど。でも主に外国で起こっていたし、世界中にこんな勢いで爆発していなかった。
鳥インフルエンザも怖かったけど、でもこんなに世界中で多くの人が亡くなっていなかった。

やっぱり、何十年か人生を生きていると、どんな平和な時代の平和な国に生まれたように見えても、何もないことはないのかな。
こんなことを経験するとは。

意外に世界は全然安定していない。
平和な時代に生まれたとすりこまれてきたから、たぶん、今の若い人よりわたしのほうが驚いている。