ある喫茶店のマスター
行きつけ――というほどでもないけれど、年に数回は行く喫茶店がある。
しばらく行ってなかった。いつ以来だろう。
2015年は1度も行ってないってことはないはずだが、最後に行ったのは何ヶ月も前かな。
電車で4つ5つ先の駅にあり、その駅にそれほど用事があるわけでもないので、たまにしか行かないのだ。
でも3月の確定申告時は必ず行くので、どれほど少なくても年に1回は行っている。管轄税務署と同じ駅にあるのだ。
ご夫婦でやっている喫茶店。
もうずーっとやっているようで、特に定休日というのもないみたい。
ショックなことがあって、家に引きこもっていると鬱々と考えそうだったから、出かけて行った。
たまたま前日、夫が「明日、あの喫茶店にでも行く?」と言ってくれたからだ。
すると見知らぬ若い男性がカウンターの中にいて、コーヒーを入れている。
奥さんはわたしたちの顔を認めたようだったけれど、マスターはいない。
どういうことだろう? もしかして・・・・・・
席に座って周囲を見回してみると、テーブルの上に飾られている花も、本棚に小さく飾られている一輪挿しもどれも白い花ばかり。
これはまさか・・・・・・
でもものすごく頻繁に来ている常連というわけでもないので、「マスターはどうしたんですか?」と聞くのもはばかられる。だってもしも悲しいことだったら――
お会計をするとき、奥さんが「長い間お世話になりました」と言った。
「おじさん、**日に亡くなったんです」「心筋梗塞で」
わたしたちはあまりマスターや奥さんと話をしながら飲むほうではなく、2人で飲んでいるだけだったので、ご夫婦というのも想像とネット情報だ。だから「おじさん」と言っているのだろうと思った。
何事も変わらないものなんてない――
自分のほうにも嬉しくない、不安になるようなことがあったばかりだから、ちょっと重かった。
でも息子さんらしき人がいて、一緒にお店をやってくれるのなら、救われるのかな。
確定申告の時期だから、また近いうちに行くと思う。
そのときはお花かお線香を持って行こうかと思った。
友達の喪中ハガキなどをもらっても不義理をしてしまうこともあるのに、なんか変かもしれないけど。