Bittersweet Maybe - Bubble Talk -

Status Message:周回遅れのビール日記(順不同)

週末の予定がなくなった日


年末に大毬(おおまり)さんと会う約束をしていたが、大海(おおみ)さんが飛び入り参加することになった。
ふたりは仲の良い職場仲間だったが、大毬さんが辞めることになったとき、仕事上のことで行き違いがあったかもしれないと大毬さんは気にしていた。辞めてからも会おうと言っていたが、なんとなく連絡を取れずにいると話していた。
夏頃、一度ランチに行こうという話をしたが、新型コロナの感染がまた拡大して、高齢のお母さんと一緒に住んでいる大海さんは「今回は見送る」と連絡してきた。
一年の終わりにふたりの再会に立ち会うことができて、本当に良かったと思っていた。



1月、三が日も土日祝の連休も終わって、すっかり日常になった週の木曜、大海さんがわたしのところにやって来た。
「土日の予定がなかったら、ランチに行かないか?」という話だった。以前はウェディングでもよく使われていて、なかなか予約が取れないフレンチのお店なのだそうだ。でもランチ2900円だというので、かなりリーズナブル。たまたまネットを見ていたら、予約枠が空いていたのだそうだ。
冬休みも連休も、メンタルヘルスがよくなくて、ぐずぐずと何もせず凹んだまま終わってしまった。平日の朝は起きたくなくて出社拒否気味な気分になる。この週末は少し運動するか、趣味に没頭するかしようと思っていたのだけれど――


とりあえず大海さんが大毬さんに連絡してくれることになった。予約枠が空いている3週くらいの日程を伝え、第一希望は14日と言っておこうと相談。またしても感染が拡大していたので、後になると行けなくなる可能性があると大海さんは思っていた。



金曜日の夕方、大海さんがまたやって来た。
「ランチさ、大毬さんから連絡ないんだよね。どうする?」
「連絡ないの?」
「そうなんだよ。何も言ってこないんだよね」
「読んではいるんでしょ?」
「既読にもなってないんだよね」
「既読になってないの?」
「ないんだよ。お昼までに連絡があったら予約して知らせに来ようと思ったんだけどさ、連絡なかったから」


相談した結果、延期することにした。
大毬さんが今後連絡をくれたら、もっと後の日程で設定する。そのときに行くから、大海さんとわたしだけで明日行くというのはなし。



家に帰って、だんだん考え始めた。
単に気づいていないだけなのだろうか。具合でも悪いのだろうか。


前から少し思っていたのだけれど、LINEしか知らない友人は、何かあっても分からない。たとえば年賀状を出し合う仲だったら、届いた年賀状に家族が「**は昨年他界いたしました」という連絡をくれるかもしれない。毎年やり取りがある人には、あらかじめ連絡するかもしれない。でも今は、LINEだけしか知らない友人知人が多い。メールさえ知らない。
家族ぐるみのおつきあいがない相手とは、いずれ不明のままになるのだろうか。連絡しても返事が来ないなぁ、というままで。


頻繁に連絡を取り合っていたら、急死でなければ少しは分かるかもしれない。「具合が悪くて入院している」とか、話が出るかもしれないから。
でも「あの人どうしているかな?」と久しぶりに連絡してみた、という人、わたしの人生には結構いる。職場や学校などが別れてしまえば、そのままになることは多い。最初のうちは連絡をしていても、そうそう頻繁なやり取りはなくなる。でも久しぶりに連絡するということはあるだろう。そうしたら、返事がないままに「もしかして何かあったのかな」と思うようになるのかな。


年を取るにつれて、そういうことが増えていくのかな。
そしてやがて、生活が家族だけになるのかな。それって、夫だけということだ。夫が先にいなくなったら、自分だけで日々を生きていくということだ。


子や孫がいる人の話を聞くと、結構凹む。旧友と再会して楽しかったのだが、これからどんどん子孫が増えていく世代になりつつある友なので、ちょっと比べてしまって落ち込んだのも憂鬱の原因だった。


夢だけれど、独り身の知り合い同士、どこかの街の一角に隣り合って住めたらいいのに。
――ま、そのための施設なのか。いつまでも自立して暮らせはしないから。


自分の未来をあまり心配しても仕方ない。未来は分からない。思ったより早くわたしは眠りにつけるかもしれないし。それもそれで、幸せなことかもしれないと思うようになってきた。


大毬さん、ただ気づいていないだけならいいけど。具合が悪かったりしなければいいけど。

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