この日の飲み会については、小さないきさつがある。

『ビール工房』が閉店してしまうことになり、つかず離れず程度の利用ではあったが、便利な場所にあってかなりの回数通った店なのでセンチメンタルな気分になっていた。
職場の部署長と雑談をしていて、今は別のところにいる元部署長の話が出た。「今は＊＊にいるから、＊＊に行ったときは挨拶して帰るんだよ」程度のことだ。ただ、その部署長は、ビール工房に素晴らしい飲み放題があることを発見させてくれた人だった。
電車の乗換駅で一緒になったとき気軽に「一杯飲んで帰ろうか」と言ってくれて、気軽に立ち寄れるのでビール工房にお連れした。そうしたら、「飲み放題っていうのがあるね」と部署長が気づいたのだ。「え、そんなのないですよ？」と思ったが、あった。最近始めたとのことだった――なるほど、じゃ知らなくても仕方ない。この飲み放題を発見したおかげで、自分もよく立ち寄るようになったし、コロナ禍前で飲み会もよくあった時代にいくつかの会で使うことができた。
現部署長に「もし今週時間があったら、30分だけつきあってもらえませんか」と勇気を出して言ってみた。元部署長が教えてくれたお店が閉店してしまうので、最後に見てみてはどうかと思ったから、と説明した。「次に元部署長にお会いになったとき、行ってみたよと話してみてください」と。
家庭に事情がある現部署長は「今日の今日は無理だなぁ」と言い、わたしも「そうですよね」と引いた。

わたしはその後は誘うつもりがなかった。だって、なくなっちゃうもの。

職場ではその後、自分にとって厄介な状況になり、いろいろあった。わたしに対するひずみが、さざ波となってほかにも波及し、人によっては「大きな波をかぶっている」と感じる人もいて、直上の管理職だけでなく、最上の管理職にも訴える人が出てしまった。事が大きくなってしまい、面倒だった。
もうわたしにとってはどうでもいいことだったから。そのときはまだ、新天地で最後の仕事人生を始める自分自身を想像していたから。（こんなに自分の市場価値が低かったとは。）

複数の人が「この現状はよくない。そのせいで自分も仕事上大変だ」と訴えた事件があったからだと思う。
部署長は、「前に行っていた店につきあってもいい」と言い出した。それも「別に30分でなくてもいいよ。事前に分かっていれば」と言うので、わたしとしてはちょっと予定外だった。
気を遣ってくれたのだろう。

けど、本当に、「こういう店があって、元部署長に教えてもらったんですよ。今度元部署長と会ったとき、話のタネにしてください」というだけのことだったので、30分でよかったのだ。
ゆっくりつきあってくれるとなったら、ビール工房跡地より居酒屋のほうがいいのではないか？ 人も集めたほうがいいのではないか？ しかし、あまり遅くなるわけにはいかないし、もともとの話を考えると跡地に行かずに居酒屋で終わるというのも変ではないか？
厄介な状態にしてくれたなぁ、というのが半分本音。
気を遣ってくれて有難いという気持ちもあるし、わざわざ時間をとってくれるというのなら、よい会にしたいという気持ちもある。

なので、名物だったビール工房を偲んで跡地に行き、たこ焼きなどをつまみにビールを飲む。ショッピングコート内にあるから、変わったお店を紹介して、そこでおやつ的なつまみも買おう。
それから居酒屋に移動すると時間が遅くなりそうなので、YEBISU BARを体験してもらって終わりにすることにした。

この店は、わたしとケイさんはできたばかりの時に試しに来てみたので、初めてではない。
そのときは、売りとなっているたこ焼きがそれほどおいしく感じられず、語り草になっていた。
しかし、この日、部署長は「たこ焼き、うまいよ」と言いながら食べていた。確かにおいしいかも。
でも、本当に「あれ、それほどでもないな」と感じたんだよな。
――結論。「あのときはチンだった（たぶん）」 ケイさんは「（初日当初は）鉄板出てなかったから、焼いてなかったですよ」と証言。今は鉄板で焼いている様子。
初日で立て込むことも予想されるから、あらかじめたくさん焼いておいて、提供するときに温め直していたのかもしれない、ということになった。

部署長は「順番が間違いなくつけられるのがいいね。一番うまいのがこの“だし”だろ？ 次が＊＊、それから＊＊だな」と語っていた。概ね全員、「だしが一番おいしい」ということで同意した。

ポテりことか、おさつスティックとか、違う店の商品も持ち込んでテイスティングしてもらえたので、まぁ満足。

ごちそうさまでした。部署長はビールは好まないけど、YEBISU BARでビール飲んで帰りましょう。

To be continued…