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Status Message:周回遅れのビール日記(順不同)

「最強のふたり」(映画)

※あらすじってやっぱり見るのとは全然違うので、それだけ聞くと「面白いの?それ?」ってことが多い。見たい方は読まないほうがいいかも。ちょっと前の映画だけど、見てもいい映画だと思うので念のため。




公開されていたとき、知り合いと見に行きましょうかと話していた映画。


首から下が麻痺した億万長者の白人ミドルと、その介護者として雇われた黒人ヤング。
黒人ヤングの名前はドリス。白人ミドルの名前はフィリップ。


二人はとても気があって、楽しくやっていたのだか、ドリスには養母と弟妹たちの問題もあったし、フィリップは「これは君の一生の仕事じゃない」と彼を手放す。


でもやっぱり、新しい介護者とはしっくりこないのだった。
それを知ってドリスはフィリップを気晴らしに連れ出す。


もともとドリスはフィリップに遠慮せず、障害をネタにした冗談も言うし、やる(お菓子をたべさせないとかね)。フィリップにマリファナ入りのタバコも吸わせるし(呼吸困難みたいになったときも楽になったりする)、性感マッサージを2人で受けたりもした(フィリップは耳なら感じるので耳を傾けだけ)。
フィリップが女性たちと文通で観念的な恋をしていれのを知って、対面させようとしたりした。(フィリップが怖気づいてかなわなかったけど。)


ドリスもフィリップに打ち解けたが、フィリップもドリスに打ち解け、愛妻を病気で亡くしたことや、いまの娘は養女だということ、パラグライダーで自分は首からしたとが麻痺したことなども語った。


久々に会ってドリスと楽しく遊び、レストランに入る。
ドリスは自分は帰ると言い、フィリップを置いて去っていく。不安げなフィリップ。
そこへ、ドリスがお膳立てしたとおぼしき、かつて対面がかなわなかった女性が入ってくる。


エピローグ。フィリップは再婚してムスメが二人。
ドリスのほうも社長になり、結婚して子供がいる。
のだそうだ。




感想


お金持ちだからだよね。


いや、結婚のことだけど。


介護者も1週間と持たないこともあるフィリップ。
もともと最高の医療がないと生きていけないほどの障害なのだ。
結構気難しいし。


フィリップと文通してた。その間に心の交流はあったかもしれない。会ってみたら重度の障害者だった。でもいい人だった。
だからって結婚しようと思うだろうか? 彼女は思ったわけだ。フィリップならできるよ。
でもほかの人だったら? 結婚できる? そこまで好きになれる?


結婚しても自分ですべて面倒を見るわけじゃない。
億万長者なのだもの、奥さんの仕事は「妻であること」であって、介護は介護者がするだろう。
奥さんも多少はしたとしても、それはそこらへんの夫婦でもあり得る「肩こってるの? マッサージしてあげようか?」とかそういう話でしょ? たとえそれが排泄物の処理でも「いいわよ、今日は私がするわよ」くらいの。
世話をしないと生きていけないという状態で、すべてが自分にかかってくるとしたら、愛情があってもそれはもう義務、仕事みたいになってしまって追いつめられる。仕事みたいに辞めるわけにもいかない。
でもフィリップとなら、制限や不都合があっても、その分楽しみも多い。ケチケチしないで旅行にも行けるし、パラグライダーだってできる。演奏会にもオペラにも行けるし、ステキな服をお互いに買いあうこともできる。幸せな結婚生活が送れるだろう。


すごいと思うよ。いい人だったんだと思うよ。こだわりのない女性だったんだと思う。
幸せになってよかったねとも思う。いい映画だとも思う。


けなしてるわけじゃない。


ただ「フィリップならね」とも思うってこと。「お金持ちだからだよね」というのはあるよねってこと。


フィリップは車椅子に乗ってるけど、ビシッと洒落た格好をしているのだ。
お金持ちでなくて施設か何かで暮らしていたら、こんな格好できない。施設の人に頼んでもここまで上手に着せられない。連れてきてもらえない。


フィリップがお金持ちでなかったら、その女性は施設に会いに行くことになり、ステキなレストランではなく、重度障害者がたくさんいて介助されている施設で対面する。
フィリップの髪型はきまっていないかもしれない。入浴や身だしなみのケアはいいとこ1日1回で、もしかしたら昨日の昼に入浴して、今日はまだかもしれない。その間にまたいつもの呼吸困難が起きて大汗かいたかもしれない。
「やあ」「こんにちは」


いいお友達にはなれるかもしれない。


でももし一緒に暮らしたら、食事のたびに食べさせる。毎日排泄の処理をする。日々長いマッサージが必要になる。夜も発作で起こされることがある。水が飲みたくても、お菓子が食べたくても、髪をとかしたくても、顔を拭きたくても、物をとりたくても、介助が必要になる。お金がなければその介助をする人は、自分しかいない。すべての責任も自分にかかってくる。ケンカをしても介助はやめるわけにはいかない。


でもお金があれば物事はかなり解決する。



・・・・・・わたしもちょっと年をとってしまったので、・・・・・・そしていわゆる老後破産、絶対するだろうという不安があるので、思う感想は「お金があるっていいな」ということ。


いい映画だったと思う。好き嫌いは別にして、水準の高い映画だと思う。見て「もっと単純に明るいほうがいいなぁ、ちょっとシリアスなところがあって悲しくなるなぁ」という時期(人生の時期)もあるけど(2年前に見たらかなり強くそう思ったかも)。でもいい映画であることは確か。


それなのに自分はラストのほんの一言のナレーション&文章に、すべての感想がかすむほど強く、「お金があるから」とお金一色になってしまう。
ホントに、豊かなお金がないってことは、悲しいことなのだ。
若いころはそれでも、未来の自分はお金を持っているかもしれないと思えたからか、別物として楽しめる部分があった。今はね――未来が少なくなってきたので、見通せちゃうから。




ところでこの映画には、もっとカタいというか、語るべきこともある。
充分長くなったし、それはまた後日にしようと思う。





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