Bittersweet Maybe - Bubble Talk -

Status Message:周回遅れのビール日記(順不同)

クラシックを聴きながら

喫茶店へ。

確定申告のついでに、小さな白い花束を持って。

 

夫は一緒じゃなくて、1人だった。

 

コーヒーを一杯。
急がないけど、のんびりでもなく、飲み終わったら帰るつもり。

 

1人だから曲がよく聴こえる。

 

夫といると話もするし、こんなに曲だけにフォーカスしないけど、ここはクラシック喫茶だったっけ。

 

なんだっけなー、この曲。

好きな部類の曲なんだよなー。こんなにメロディを通しで知っているくらいだから。

 

自分の好みは分かってる。

何事につけ分かりやすいのが好き。高度な鑑賞力を要求されるものは分からない。

わたしでさえ「美しい」とすぐに分かるような。つまり現代芸術などは難しいってこと。

 

だから見当もつくってもの。

ベートーヴェンあたり、たぶん。

 

でも曲名も作曲家も浮かんでこない。

 

カウンターで白髪の紳士がちょうど語っている。

リストのこと、ワーグナーのこと、エカテリーナのことやエルミタージュのこと。

「でもね、もう言葉が出てこない。僕の頭の中でね。エカテリーナとか、単語が」

 

ああ、分かるよ。

同じ。

 

でも、お店の奥さんを相手にしているからちょっとテキトーに話をしているところがある。

ちょっと訂正したくなる。

わたしはエカテリーナのことは池田理代子のマンガで読んだしね。

 

曲が変わった。

ピアノ協奏曲。ショパンかな。きぅと。

 

聞き覚えのある旋律を追いながら、帰り支度。

 

ここのマスターも幸せだったよな。

毎日休むことなく店を開けて、昼から晩までコーヒーを淹れて、お客の相手をして。

病んで長患いするのじゃなく、心筋梗塞で、いわゆるピンピンしていてコロッと逝くのがっていうやつで。

 

でも一時代が終わったよう。

もう今どき休みなく店を開けてる人なんて少なくなった。

野心に溢れた若者はやっているだろうけど、あんなふうに自然に、働き続けるのは・・

 

自分の小さなお城を大切に手入れして、そこで満足して働くような人は、若ければそれ以外のものも大切にするから、休みもとるし、結局は他に逃げ場もある。

 

あんな人はいなくなった。

この店も、若い人がどれだけ続けていけるか、いつまでこんな店であるのか、もう分からない。




×

非ログインユーザーとして返信する