思えば・・・・・・とまた玉虫色について考える(シリーズ:翌4月からの仕事)
自分は確かに、ある意味で裏側に扉があった。
フリーランス的立場だったために、普通のパート的スタッフさんたちが直接は口をきかないような偉い人と話をする機会が多かった。
フリーランスというのは「外の人間」ということで、それは組織の「お客さん」だから、特別な立ち位置にあるのだ。
そういう顔つなぎなしに、自分だけで「あ、募集が出ている」と応募して、面接を受けても、採用の可能性は0だったろう。
今、多少なりとも可能性があるのは、自分を知ってもらっているからだ。
だけど、わたしが好かれているとか、そういうことじゃない。
パート的スタッフの『老師』にも自分の都合があったように、偉い人にも都合がある。
一番上のほうにいる偉い人は、実は今のその部署のやり方が気に入らない。
でもその場にいる正社員的スタッフ全員を無視して思いを遂げることはできない。いくら最高位の地位にいても。この組織は互いを傷つけあわないことで成り立っているのだ。
この部署が困ったやり方をしているのも、実はあるお局さまがいるからなのだ。
かつて正社員的スタッフとして定年を迎え、その後、契約社員的スタッフとして働くお局さま。
当然その人は、ある意味、準正社員的スタッフである。
その部署のやり方は、お局さまが正社員的スタッフであった時代に築かれた。お局さまが契約社員的スタッフになっても、昇進した正社員的後輩たちはお局さまのやり方でやっている。だってまだお局さまはいるんだもの。
当然、その部署の契約社員的スタッフもパート的スタッフも、お局さまのやり方を踏襲している。
いよいよお局さまは、契約社員的スタッフとしての第一次定年を迎えることになった。
(なんと希望したらまた、第二次定年まで契約社員的スタッフとして働けるそうなのだ。)
お局さまがいなくなったら、この部署のやり方を変えたい。
しかしそのポストに、これまでのやり方を一緒に貫いてきたパート的スタッフが入ったら、物事は変わらないだろう。
だからパート的スタッフではないほうがいいのだ。
――でもまったくの未経験者を雇うのは吉凶定まらない。
そこに、染まっていないが経験者であるという、フリーランス的スタッフのわたしがいた。
ちょうどフリーランス的業務は減らしていかなければならないという時期――
だから「そういう働き方を考えてみて」と曖昧にほのめかしてきたというわけだ。
もう少し現場に近い、現場統括役の偉い人は、わたしがこれまでフリーランス的にしてきた内容が多岐にわたっているので、それがいいと思ったようだ。
現場に近い人は、やっぱり現場で便利かどうかで考える。
たとえば多くのパート的スタッフさんは、普段Word、Excel、PowerPointくらいしか活躍していない。
こいつならAccessもやってるし、VBAもやってるし、HTMLもやってるし、使える幅が広がる。という考え。
とにかく結局、わたしは有利だったわけじゃない。
神さまたちは、「採用したい」と思えば、採用する。
「この人はダメ」と思えば、採用しない。どんなに親しくても。どんなに何ができても。
そのときの神さまの好む条件に合えば、採用される。
ただのタイミングなのだ。
神さまたちは、神さまたちだけの論理で動く。
地上を這いまわるわたしたちが何をどう頑張っても、その頑張りでどうにかなるわけじゃない。
頑張らない者はもちろん、「それ相応の敬意」というやつを欠いているので、ダメだ。
でも頑張ったからといって、それが評価の対象になるわけじゃない。
努力も、能力も、アピールも、おもねりも、すべて「書類選考は通る」という程度のことであって、採用するか不採用にするかは神のご意志のみ。
それはどんな会社でもそうだろうと思うけど、ここでもそうだってことだ。烈しくそうだってことだ。
パート的スタッフさんたちも、自分の知っている中の人や偉い人や現場の正社員的スタッフに、最大限のアピールをしたわけで、わたしがアピールできなかった人にもアピールしている。
でもそれも、またわたしのアピールも、最終的には関係ない。
それに――第二部長補佐がいる。
この人はどちらかというと「反」わたしなので、わたしはそういう意味では不利である。
ところで、第二部長補佐といえば、玉虫色の人だ。
「え、それ、本気にしますよ」「なぜそれが玉虫色の適当な発言になり得るのか分からない」ということが何度もあった。
で、今にして思えば――
パート的スタッフさんたちが一人また一人と第二部長補佐に、「空く予定の契約社員的ポストに入りたいんです」と陳情に現れ、第二部長補佐は言ったと聞いている。
「応募はもちろん自由だけれど、応募するということは、いったんパート的スタッフを辞めることになる。契約社員的スタッフに採用されなかったとき、パート的スタッフに戻ろうとしても、そちらが既に埋まってしまって、今のパート的スタッフの立場さえ失ってしまうかもしれない」と。
これ、たぶん、玉虫色的発言だったんだな。
実際はそんなことないのかもしれない。
牽制してたんだ。
来られたら面倒だから。
来られて、不採用にした場合、「どうして私は不採用だったんですか?」と詰め寄られると面倒だし。「あの人がなるくらいなら、私のほうが経験もあったし、資格も持ってるし――」なんて。
玉虫色の第二部長補佐は油断がならない。
この人がいる限り、きちんと人事部から採用の連絡があるまで、大どんでん返しの可能性は捨てきれない。
採用されても、何があるか分からない。