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ケミストリーについて考える(「ヴァンパイア・ダイアリーズ」を見て)

「ヴァンパイア・ダイアリーズ」は全米大ヒットドラマ。
とはいえ、世界中で大ヒットした「Glee」ですら、日本では微妙な人気具合。
もともと日本は、たとえば本国でも人気のなかったクイーンが初めて成功したのは日本だったり、何かを好きになることについてガラパゴスなのかもしれない。
 
「ヴァンパイア・ダイアリーズ」は、南部の田舎町の高校生エレナが、美しいヴァンパイアの兄弟に愛される物語。
 
「南部の」というところは、外国人にはピンとこないけれど、どうやらアメリカでは納得らしい。
古い歴史のある南部では摩訶不思議なことが起こっても納得だし、そもそもそういう歴史。黒人奴隷たちの怪しげに見える信仰(ブードゥー教などの)や、(当時の白人にとって)異質な容姿、マーク・トウェインの小説「トム・ソーヤーの冒険」でも南部はまじないと迷信が渦巻いている。
南部のセーレムでは魔女裁判の歴史もある。魔女狩り、魔女裁判といえば、中世ヨーロッパの恐怖だ。
 
とにかくそんな、雰囲気たっぷりの南部の町、ミスティック・フォールズの女子高生エレナ。彼女は事故で両親を亡くし、弟と伯母と暮らしている。遊びに行った自分を迎えに来た両親が、帰りに自動車事故になり(川に落ちてしまう)、自分だけ助かったエレナは罪悪感を抱えている。
 
悲劇のエレナの前に、美しい青年ステファン・サルヴァトーレが現れる。ある古い屋敷に住んでいた伯父が亡くなり、整理のために移ってきたのだった。
 
ステファンが「美しい」という形容詞に当てはまるかどうかは、好みの問題。
アメリカでは主流な役どころはマッチョな筋肉を持っていないといけないルールがあるので、「美しい」といっても線の細い女性的なタイプではない。
 
さらにステファンの兄、性格の悪いデイモンも登場する。
そしてステファンへの嫌がらせから、エレナにちょっかいを出してくる。しかしやがて、デイモンもエレナを愛するようになってくるのである。
 
町はヴァンパイア伝説のある古い土地で、今でも町の有力者たちがひそかに結成しているヴァンパイア対策委員会がある。
エレナを巡るステファンとデイモンの諍いだけでなく、過去のステファンとデイモンの確執、ステファンとデイモンをヴァンパイアにした女ヴァンパイア、キャサリンの登場、ヴァンパイアと魔女たちとウェアウルフ(狼人間)の三つ巴の闘いが始まる。
(シーズンが進むにつれ、最初のヴァンパイア、オリジナルズが登場したりして、抗争はより大きく複雑になっていく、という仕組み。)
 
超自然的存在が人間社会を舞台に抗争を繰り広げる全体のストーリーは、いつもながらのアメリカドラマで面白くできている。二転三転、目が離せない。
エレナとサルヴァトーレ兄弟の恋のストーリーは、まるで少女マンガである。
超自然的存在の2人が、エレナにやたらと執着して、兄は意地悪で性格悪い、でもエレナには優しいときもあったり、意地悪にしてみたり、強引だったり、でも心の中では激しくエレナを愛しているし、弟は優しくて、理解があって、正義を貫くし、エレナと恋人同士。でもエレナの心は、兄デイモンのちょっかいに心が動いたり、ときめいたりする。いやもう、臆面もない少女マンガで、女の子たちはエレナに自分を投影してドキドキする。
 
この甘いときめきラブストーリーの味付けに、中年のわたしもノックアウト。
当然好きなのはデイモンだ。
女はデイモンタイプが好きだ(マンガやドラマで見ているぶんには特に)。YouTubeでファンの集いを見たけれど、デイモン役のイアン・サマーホルダーが登場すると「きゃー!!きゃー!!!!! きゃー!!!!!!!」とすごい騒ぎ。ジャニーズの大人気グループが登場したのと同じような、黄色い悲鳴に会場が埋め尽くされていた。
 
エレナとデイモンの恋は、(ストーリー的にはエレナは心が揺れるだけで、ステファン一途という態度を崩さないのだが)、ドキドキする魅惑のドラマだった。
 
しかしYouTubeのファンの集いで見るイアン・サマーホルダーにも、海外ドラマニュースのサイトで見る激写されてるイアンとニーナ(エレナ役の女優)のツーショットにも、ドキドキしない。
イアン・サマーホルダーの普段の服のセンスとか、ひげなどのセンスは、わたしのような流行を理解しない人間にはピンとこなかった。でもドラマでは、髪型もひげなしな頬も好きなのだ。
 
そしてそこには、何かかもしだされるものがあった。雰囲気というか、大気というか、オーラというか―― 考えて「ケミストリー」だな、と納得した。
 
デイモン役のイアン・サマーホルダーとエレナ役のニーナ・ドブレフは、その後、公式に付き合うことになった。
たぶん、わたしが一番ドキドキしていたあたりを撮影していた時期は、イアンとニーナがお互い意志を確かめ合う寸前だったのだと思う。友達以上、恋人未満、それもほんのちょっとだけ未満、という一番おいしいところ。もう気持ちはほぼ恋人だけど、まだお互いちょっぴり探り合いで、オフィシャルになる前で、でももう気持ちは最高潮という、もっともいい時期。
このケミストリーがテレビ画面にも反映されていたのだろう。
 
あまり好きすぎて、よく検索して海外ドラマニュースサイトで見ていたので、2人のラブラブなときの記事も見た。
ニーナが雪豹を飼っただったか、Twitterで「私、結婚する!」とツイート、イアンが「なに!?」とすぐさまツイート、ニーナが雪豹との写真と共に「彼と!」とツイート。
そんなことまで記事になってた。
 
でもラブラブになってしまうと、テレビ画面のケミストリーは消えた。
普通の仲良しの恋人たちになったというか。
 
そして破局。
2人はディレクターに「関係が終わっても、プロとして公私はきちんと分けて仕事する」とそれぞれ伝えたとか。
 
しかしニーナはすぐに新たな恋人を作り、イアンも負けじと恋人を作り、ラブラブなところを見せ合い、撮影にも新恋人がやってきたりして意地の張り合い。大変に険悪なムードと報じられた。
それがドラマでいうといつ頃の話を撮影しているときか分からないけど、もうあの頃のケミストリーは公認の仲になってしばらくするとなくなっていたので、あまり気にならない。
 
途中から出てきていた元祖ヴァンパイアたちオリジナルズは、「オリジナルズ」というスピンオフに移動。
親シリーズの「ヴァンパイア・ダイアリーズ」をしのぐほどの大人気。
 
で、ついにニーナ・ドブレフはSeason6をもって「ヴァンパイア・ダイアリーズ」を降板するのだそうだ。
 
えー! エレナがいなくなったら、話の主軸がいなくなるってことでしょ?大丈夫なの?
 
――でも大丈夫かもしれない。既にいろいろな人物が登場して、話の主軸っていうのがどこなのか、入り乱れて分からなくなっている。
それがこの群像型のいいところだ。昔風の1人が主役という話では、その人が降板したらやっていけなくなる。
 
海外ドラマニュースなどで見ていると、ニーナ・ドブレフはひとつところにじっとしていないタイプみたい。
新しいことがしたくなる。
恋も仕事もそうだってことなのかな、と思える。もちろん、本当のところは知らないけれど。
 
ただとにかく思うのは、「ヴァンパイア・ダイアリーズ」を見て、少女のようなときめきを味わったってこと。
それはいいときに、いい恋をしていたためのケミストリーだったんだろうってこと。




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