ここまできてまさかの玉虫色?(シリーズ:翌4月からの仕事)
「3月**日にハローワークに募集が出る」
応援してくれたパート的スタッフの部長補佐秘書さんは、「必ず朝一番に行ってください」と何度も言った。
「6人で締め切るということです。締め切られないうちに行ってください」と言い、前日もメールが来た。「明日行けそうですか?」
わたしもまったくの世間知らずとまではいかない。
玉虫色の第二部長補佐は、偉い人から「あの人はどう?」と言われている手前、わたしの面接をしなければならない。パート的スタッフさんたちが受ければ、その面接もするだろうけど。
パートの部長補佐秘書さんが、偉い人ともよく会話しているのも知っているし、パートの部長補佐秘書さんもわたしを推しているのも知っている。
だから、部長補佐秘書さんからわたしに伝わるのを知っていて、こういうことを言っているはずだ。
「余計な面接をしたくはないから、早く応募しろ」という意味でもあり、あわよくば「待っていたんですけど、彼女が応募してこなかったんですよ」と偉い人に言ってわたしを蹴ることができるわけだ。
それで、朝一番にハローワークに行ったら、全然募集は出ていなかった。何時間も待ちぼうけを食わされた。
「行くだけは行きましたよ」と数少ない人脈を怒らせないためにパート的部長補佐秘書さんに連絡して、帰った。部長補佐秘書さんが、「どういうことですか?」と第二部長補佐に聞いたときは、心の中でしてやったりと笑っていたことだろう。
「別の部署でも契約社員的スタッフを募集することになったから、それを付け加えるために修正していて、まだ出ていないのかもしれない」と教えてくれたそうだ。
――でも、わざとそのことを部長補佐秘書さんには言わなかったに違いない。嫌がらせなのか、あわよくば諦めて帰って締切に遅れることを願っていたのか。わたしに伝わらせないために、わざと言わなかったに違いないと確信している。
表立って拒否はできないが、小さいところでしつこく画策していると感じる。そんな疑惑、ばからしいと思うけど、でも絶対そうだと思う。
わたしは午後もう一度行って、応募して、面接の約束もとりつけた。
「面接は15日と16日の2日間でおこなうつもりです」と第二部長補佐はわたしに言った。
ハローワークの人も、「面接は15日と16日だけだそうですが、大丈夫ですか?」と言った。
わたしは15日に面接してもらうことになった。
募集はわたしがもともと狙っていた部署と、隣接する部署の2つになっていて、面接時どちらがいいかと聞かれて「お任せします」と答えた。
すごく迷った。
希望は、もともと狙っていた部署だ。でも、そう言ったら、第二部長補佐は「そちらにはこの方のほうがいいと思うんですよ。でも彼女はもうひとつの部署ではちょっとと言っていたから――」と不採用にされてしまうかもしれない。
でもどちらでもいいと言ったら、わたしが好まない部署に押し込もうと画策されるかも。
――迷ったけれど、とにかく契約社員的スタッフになるということが大事だと考えた。
不採用の可能性はなるべく避けなければ。
それから何日か経って、3月の仕事が始まった。
パート的部長補佐秘書さんと、パート的『老師』がいて、わたしもいた。休憩時間だった。
部長補佐秘書さん「まだ面接してるんですよ」
え、まだ? 15日と16日だけって言ってたのに。
もう2日もオーバーしてますけど。
部長補佐秘書さん「偉い人と第二部長補佐、あの部署には男性を入れたいと思っているんですよ」「実務経験の豊富な男性」
面接のときの様子が浮かんでくる。
わたしの職歴は長い。短くあちこちで経験したものもすべて含めているからだ。(それが狙う職業に直結しているので、省略できない。)
職歴書を作成するにあたって、「応募している職種に関係のあるものを先に、重点的に書く」というスタイルを参考にした。
そうしたら、それ以外の一般事務の経験の記述が簡潔だと、第二部長補佐は突っ込んできた。
「**履歴についてはかなり詳細に書いてくださってますけど、事務についてはあまり書かれていないですが、どんなことをなさっていたのでしょうか」
だって、あんた、普通、**の仕事に応募したんだから**の経験を重点的に書くでしょうよ。
「実務経験(というのは一般事務のことのようだった)として、いろいろな部署を渡り歩いて、会社の業務の流れをひととおり全部経験したという職場は、この職歴の中でありますか?」
そんなゼネラリストみたいな、昔の公務員みたいな会社、今ないよ。
総務部も広告部も宣伝部も製品部も経理部も営業部も通販部も、ぜーんぶ経験した人? そんな人の使い方をする会社、そうそうないよ!
そうしたら、何日も経った今、「実務経験の豊富な男性をとりたい」という話を聞かされる。
――偉い人も、納得したんだな。
もっと細かく事務経験について書けばよかったか、とも思ったけれど、無駄だったろう。
そうしたら、「履歴書の書き方として、これは的を射ていないですね」と陰で言われたかもしれないし、「これだけいろいろ経験していても、**の職種は経験がないんですね」と突っ込まれたかもしれないし、「職歴があるのは分かったけれど、資格はあまりないんですね」と言われたかも。
とにかく、足りないところを突かれたに違いない。
それにわたしは、決定的に「男性」ではないし。
「やっぱりあそこには男性がいいですね」と話をもっていかれたら、どうしようもない。
もしどうしてもわたしを採用しなければならないなら、働きにくい部署のほうに持っていこう、と考えているのかも。
部長補佐秘書さんは「でも、そんな人、見つかりっこないですよ」
――だから大丈夫、わたしになるだろうという意味らしい。
でもどうだろう。玉虫色の第二部長補佐は執念深い。
そしてさすがの小細工ぶりだ。
部長補佐秘書さんは、わたしと部長補佐秘書さんと『老師』で、打ち上げをするつもりだった。前の日に、「明日、『老師』と話しあって日を決めておけ」とわたしに指令が下っていた。「いつに決めたんですか?」
わたしは「1週間後」と言われた結果通知の日まで、行けないと答えていた。
部長補佐秘書さん「お祝いじゃないですよ。ただの食事会ですからね!」(だから結果がどうであれやる、だから結果通知前でもいい、という意味。)
――そんなの、嫌ですよ。
日は、結果通知が来る翌日に決まった。
部長補佐秘書さんは、「あたしは結果知ってるけど、教えない」と言う。(余計なことは口出ししないという意味だ。)
でもわたしは、実際に人事部から連絡が来るまでは、いくら陰で何を言われたって、信用できない。
玉虫色の第二部長補佐がからんでいるのだから。
それに、結果が採用でも、「部署はまだ未定」とか言われて、4月までドキドキさせられたあげく、望まない部署になっている可能性も高くなった。
もう仕事に就く前からうんざりしてきた。
その上、縁の下の力持ちしかしない、フリーランス時より奴隷的意味合いが強い立場。
昇給も昇級もなし。階級に組み込まれるので、気分も仕事内容も立場もやり方も、何もかも奴隷的意味合いが強い立場。
すみませんが、ホント、もう安穏だけが取り柄のようなので、マイペースでやらせてもらいます。もし採用されたら。