2024.02.03-02.06|再会の旅② 五福カフェ
本当は年末にみんなで一緒に行くはずだった『五福カフェ』に、ひとりで行ってみよう。
キャリーケースやノートパソコンなどをホテルに置き、身軽になって冒険に出発だ。
だって、本当に冒険だ。乗ったことのない電車、行ったことのない場所。
目的のカフェは、新幹線を下りてから17~18分ほど電車で移動したところにあると分かった。20~25分くらいに1本、電車が走っているらしい。
駅を降りると、ロータリー中央の小山のようなところに傘がたくさん並んでいた。歩道脇にも飾られている。
「はだか祭りのまち 西大寺(さいだいじ)」という石造りの灯篭を象(かたど)ったオブジェが立っていた。小山の中央の噴水の中心には、何かをつかみ取ろうとするはだかの男性たちの像があった。
もの知らずなので、はだか祭りというお祭りを初めて知った。
今調べると、岡山市のサイトで観音院のはだか祭りが説明されていた。日本三大奇祭として全国的に有名なお祭りだそうだ。
「毎年2月の第3土曜日の夜に行われます」とある。ということは、この日の2週間後が祭りの日だったのか。飾られた傘は一年中あるのではなく、お祭りを控えての準備だったのかもしれない。
本堂から住職が投下する2本の宝木(しんぎ)をめぐって、ふんどし一丁の裸の集団が恐ろしい争奪戦を繰り広げるお祭りらしい。宝木(しんぎ)を取った者は福男と呼ばれ、福が得られるそうだ。
そんなことは知らなかったわたしは、静かな駅を出て、静かな通りを歩いていった。車通りは普通にあるが、人通りはほとんどなかった。寒い日だったからかもしれない。
Googleマップに従って住宅街を抜ける。
レトロな建物があり、景観がよい通りもあった。撮影などにも使われる歴史的な建物が残る通りだそうだ。
用水路が多くて、それもまた景色を作り出している。日本は水の国でもある。こういう街、他にもあるよね。静岡の三島もそうだったな。
どのくらい歩いたのかな。「ここかな?」と思う場所に着いた。風情のある民家風の建物を利用したお店だった。辺りの景色になじんでいる。表の庭は綺麗に整えられていた。
中に入るとお客さんが3組ほどいた。女性2人で話しているグループ、女性も男性も入り混じったグループ、男女のカップル。人気のお店なんですね。大勢のグループは、階段を上がったロフト風のエリアのテーブルにいた。
わたしはひとり。2人がけテーブルでもよいと言われたけれど、醸造タンクが見えるコの字型のカウンターに座ることにした。お店の中央にあり、大きな木を囲むように建てられたガラス窓に面したカウンターだ。
人はいても外を眺めていられるので、落ち着く――
生のクラフトビールを飲んでみたかったのだが、ボトルしかなかった。もしかして、カフェではボトルビールのみだったのかな。
奥にはタップルームのように見える空間もあったので、カフェ以外の営業形態もあるのかもしれない。よく分からない……。
せっかく来たのだから、ボトルでもいいからここで飲みたい。
メニューを見ると、5種類のビールが図入りで書かれていた。
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※説明は抜粋
AKURA / アクラ
会陽(はだか祭り)で有名な金陵山西大寺観音院にあり、古くから地域を見守るように立つクロガネモチ(アクラ)の木の酵母を発酵させました。
蔵の子
昔ながらの街並みを残す岡山西大寺五福通り。“蔵の子”は築85年の倉庫を改修して生まれた五福工房の黒発泡酒。
Citrus / シトラス
地元岡山産レモンを使用して醸造しました。
Fragaria / フラガリア(季節限定)
岡山市東区西大寺で収穫された新鮮な苺をふんだんに使用しました。
Muscat / マスカット(季節限定)
岡山県産のマスカットを使用。
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この地域の活性化になるようにという願いを、どこかで見た。このお店、または工房のソーシャルメディアだったか、それともメニューのどこかに書かれていたのか、忘れてしまったが。
その思いが分かるメニュー表の説明だった。
全部は無理だと思い、飲みたいものを2つ3つ飲むことにした。
苺は飲みたいよね。ラベルには赤と白の苺の絵。注ぐと綺麗なピンクオレンジ色だった。
Akuraは、なんといってもそんな貴重な酵母を使っているのだから、試してみたい。綺麗な金色のビールだった。
なんか、あまり酔わないな。
それもそのはず。よーく見たら、ボトルのラベルにABVが書いてあった。3%くらいしかない! そりゃすぐには酔わないわ。
調子に乗って、蔵の子も頼んだ。真っ黒なビールだった。
写真も撮りたいし、1杯1杯、ビールが空気になじむまで時間をかけながら飲んでいると、お店が終わる時間までに飲み終わらない。前のAkuraが残っているが注文した。
前に注文しておいたパスタが届いた。
ひとりなのでハーフポーションでお願いできた(というかすかな記憶がある)。どれがあまりがっつりしていないか聞いたら、お店の方からそのように勧めてくれた(という記憶がなんとなくある)。
ビールと一緒に写真を撮って、とりあえずUNTAPPDに投稿。
これはどのビールも結構大変だった。UNTAPPDにはなかったので、すべてクリエイトしたからだ。手間がかかった。(それで、ABVを気にしていた。)
さて、パスタをいただこう。
――あれ? これ、絶品じゃない? すごくおいしいクリームソースだ! 「好み」と言いたいが、それはちょっとおこがましい気がする。わたしの舌の守備範囲を超えるおいしさを感じた。
クリームパスタが好きなわたしは感動。
これは、近くにあったらまた食べに来るな。すごくおいしい。凝縮されたコクがある。魚介が邪魔をしていない(蟹のトマトクリームパスタとか、苦手)。
あまり感動したので、がまんしきれず、スイーツもひとついただくことにした。
カフェで散財、満腹。食べ過ぎだ。
ビールを飲んでいるので、いつもならそろそろ満腹中枢が麻痺してくる頃だが、度数が少なく普通に満腹感。
しかし、それでもスイーツはおいしかった。とてもおいしい。好み。
盛り付けも美しかった。
ああ、いいなぁ、ここ。近くに欲しいなぁ。(逆にうちにどこでもドアがあるなら、それでもいい。)
閉店時間ギリギリにすべて食べ終わり、お会計をした。
もうお店のホールスタッフの方たちはすべていなくなり、別のスタッフたちによるカウンターの内側ではりんご飴をひたすら作る作業がさっきから始まっていた。ホールスタッフの方ではないから、お会計にも手間をかけさせてしまって、申し訳なかった。(ひとりの方は、「分からん。**さん、できる?」と他の人に聞いていた。)
おいしかったなぁ、と幸福感を感じながら、シキさんへのおみやげのビールを抱えて駅に帰った。
To be continued…


